なぜ今、排気ガス規制が注目されているのか
ここ数年で「排気ガス規制」という言葉をニュースやSNSで見かける機会が一気に増えました。
なぜ今、こんなにも注目が集まっているのか──その理由は、環境対策の加速と、自動車を取り巻く社会の変化にあります。

地球温暖化/環境対策の流れ
世界中で脱炭素(カーボンニュートラル)を目指す動きが進み、国や自治体が「排気ガスを減らす」方向へ舵を切っています。
特に自動車は、二酸化炭素(CO₂)だけでなく、PM(粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)など、健康に影響を与える物質を出すため、対策が急務とされています。
- EU:2035年までにガソリン車の新車販売を実質禁止
- 日本:2030年代半ばに電動車の比率を大幅に引き上げる方針
- 自治体レベル:都内での“ゼロエミッション車”推進
このように世界的な環境政策の流れの中で、日本でも「排気ガスを減らす車に乗り換えるべき」という意識が強まり、規制強化が避けられない状況になっています。
規制強化の背景と最近の社会的関心
排気ガス規制が注目されているもう一つの理由は、ここ数年の健康被害や都市部の大気環境への関心の高まりです。とくにPM2.5などの微粒子は、呼吸器疾患との関連が指摘され、社会全体で「排ガス=生活に関わる問題」という認識が広がっています。
さらに2025年以降は、バイクの蒸発ガス規制強化や直噴ガソリン車のPM対策など、具体的な制度変更が続くため、メディアでも「古い車・バイクはどうなる?」と取り上げられる機会が増えました。
こうした流れから、ユーザーの関心は次のようなポイントへ向かっています。
- 自分の車は規制対象なのか?
- いつから規制が厳しくなるのか?
- 長く乗れるのか、それとも買い替えるべきか?
“排気ガス規制=難しい専門用語”という印象が強いですが、実際は日常のカーライフと直結する現実的なテーマ。
今注目されているのは、こうした社会的背景があるためです。
排気ガス規制って何?基礎知識とよく使われる言葉の意味
排気ガス規制とは、自動車などから排出される有害物質を減らすために定められている国の基準のことです。
環境や人体への悪影響を減らすために、車に求められる排出ガス量の上限が細かく決められています。
PM/NOx/HC/CO/排ガス規制とは
排ガスに含まれる有害物質にはいくつか種類があります。
- PM(粒子状物質):ディーゼル車などから出る微細な粒子。健康被害の原因となるため厳しく規制されています。
- NOx(窒素酸化物):大気汚染や酸性雨の原因となる物質。
- HC(炭化水素):光化学スモッグの原因物質。
- CO(一酸化炭素):不完全燃焼で生じる有害ガス。
これらの排出量を国が定めた基準以下にしなければ販売・走行できません。この基準全体をまとめて「排ガス規制」と呼びます。
「排出ガス基準」「燃費基準」「排ガス規制番号(平成◯◯基準など)」の説明
- 排出ガス基準:さきほどの PM・NOx など有害物質をどの程度減らすかを定めた基準。
- 燃費基準:CO₂削減のために、自動車の燃費性能に対して定められた基準。
- 排ガス規制番号(例:平成17年基準、平成30年基準):その車がどの年に定められた排ガス基準に適合しているかを示すもの。
車検証の「備考欄」などに記載されていることが多く、自治体の環境規制(低排出ガス車の指定など)を判断する際に参照されます。

なぜ古い車が不利になりやすいのか
古い車が不利になる理由は、当時の技術では現在の厳しい規制を満たすことが難しいためです。
年式が古いモデルほど、有害物質を抑える装置(触媒・DPFなど)の性能が低かったり、そもそも搭載されていなかったりします。
その結果、特定地域での走行規制・増税・車検時の負担増などに影響し、維持しにくくなるケースがあります。
日本国内の排気ガス規制の内容と最近の変更点
ガソリン車、直噴車、ディーゼル車、バイクなどの規制概要
日本ではこれまで、ガソリン車・ディーゼル車・バイクなど、さまざまな車両に対して排気ガスの排出基準が定められてきました。
以下の表は、一般的な車両種ごとの規制の概要をまとめたものです。
| 車両の種類 | 規制対象の主な排出物 | 基準適用の代表例 |
|---|---|---|
| ガソリン車(通常型) | HC, CO, NOx など | 平成17年規制以降の新車など |
| ガソリン直噴車 | PM(粒子状物質)、PN(粒子数)など | 2020年12月以降の新型車、2022年11月以降の継続生産車 |
| ディーゼル車(乗用/貨物) | NOx, PM など | 平成21年規制(ポスト新長期規制)適用以降の車 |
| バイク・二輪車 | HC, NOx, CO, 蒸発ガスなど | 2018年の排ガス基準改定以降のモデルなど |
このように、車種ごとに対象となる排出物や規制の内容が異なり、とくに近年では「ガソリン直噴車」や「ディーゼル車」「バイク」に対して規制が強化される傾向にあります。

最近強化されたポイント
- ガソリン直噴車へのPM/PN規制の導入:従来、ディーゼル車が主に対象だった「粒子状物質(PM)」の排出規制が、直噴ガソリン車にも導入されました。2020年12月から新型車、2022年11月から継続生産車に適用。
- 粒子数(PN)基準の追加:ただ単に質量としての微粒子ではなく、「粒子の数」による評価基準も導入へ。私たちの予想よりもさらに厳しい基準。
- バイク・二輪車の排ガス&燃料蒸発ガスの規制強化:走行中だけでなく、アイドリング時・駐車時の排ガスや蒸発ガスにも対応。これにより、古いバイクは規制対象になりやすくなっています。
- 地域ごとのディーゼル車・NOx・PM 規制(いわゆる 自動車NOx・PM法)の運用継続:都市部では、古いディーゼル車の使用が制限されるなど、地域ごとに規制が異なる点に注意。
規制開始年月や猶予期間の目安
これまでの規制導入の流れと、適用時期の目安を以下にまとめます。
- 昭和40年代〜:日本での排出ガス規制の始まり。CO → HC/NOx など順次拡大。
- 平成17年〜平成21年:「新長期規制」「ポスト新長期規制」による大幅な基準強化。ガソリン/ディーゼル車ともに対象。
- 2019年2月:ガソリン直噴車および二輪車などの排出ガス規制強化の告示改正。
- 2020年12月:直噴車の新型車に新規制を適用開始、
2022年11月:継続生産車にも適用拡大。 - 2023年〜2024年ごろ:粒子数(PN)基準を含む更なる強化が決定され、今後適用が予定されている。
このように、排ガス規制は“段階的に強化され続けてきた”流れがあり、特に直近数年で大きな改正が行われています。
そのため、過去数十年の間に購入した車やバイク、あるいは古めのディーゼル車や直噴車を所有している人は、「自分の車が今後どうなるか」 を改めてチェックする必要があります。
★新車に対する排出ガス規制について

自分の車が規制対象かチェックする方法
車検証で確認すべき項目
排気ガス規制の対象かどうかは、まず「車検証(自動車検査証)」を確認することで判断できます。とくに確認したいのは次の4つです。
① 排出ガス基準
車検証の「備考欄」に「平成17年排出ガス基準適合」「平成30年基準達成車」などの表記があります。
この記載が古いほど、最新の規制に適合していない可能性が高くなります。
② 規制適合記号(記号:G、H、Tなど)
「G(ガソリン)」「H(ハイブリッド)」「T(ディーゼル)」「LPG」など、燃料区分に関連する記号です。
ディーゼル車の場合は、地域のNOx・PM法の対象判断にも影響します。
③ 型式指定番号・類別区分番号
車両の排ガス区分を特定するために使用される番号です。メーカーの適合リスト検索で必須。
④ 初度登録(初年度登録)年月
排ガス規制は「いつ製造された車か」で基準が分かれています。古い年式ほど規制対象になりやすいため重要です。
とくに「平成17年基準以前のディーゼル車」や「平成22年頃以前のガソリン直噴車」は、最新の規制では不利になるケースが増えています。
メーカー・車種別の適合状況の調べ方
自車の詳細な排ガス適合状況は、メーカーごとのデータや公的情報で確認できます。調べる際のポイントは以下のとおりです。
- 車検証の「型式」を使ってメーカー公式サイトで検索
多くのメーカーは車種別に「排出ガス規制の適合状況リスト」「低排出ガス車リスト」を公開しています。
型式を入力すれば、自車が「★★☆☆(平成17年基準)」や「☆☆☆☆(平成30年基準)」などが確認できます。 - 自治体の「NOx・PM法 適合検索」ページで確認
とくに都市部(東京都・神奈川県・愛知県など)は、ディーゼル車について独自の走行規制があります。
ナンバー情報または型式で照合できます。 - 中古車情報サイトの「排ガス区分表示」を確認
中古車検索サイトでは、車両情報欄に「排ガス規制:○○年基準」「低排出ガス車(☆3つ)」などの表示がある場合もあり参考になります。 - ディーラーでの直接確認
年式の古い車・並行輸入車・特殊車両などは、メーカーが直接照会しないと分からないケースがあります。
とくにガソリン直噴車は、外観からは判断できないため、メーカーのリストで「PM対策済み」「直噴規制対応」などの表記を確認することが重要です。
海外・他地域の排気ガス規制の例と比較

欧州、北米、アジア主要国などの代表的な排ガス基準の紹介
| 地域/規制 | 代表的な基準名 | 対象車種 | 主な規制項目 |
|---|---|---|---|
| 欧州(EU) | Euro 6/Euro 6e など | 乗用車・商用車・ディーゼル・ガソリン | NOx・PM(粒子状物質)・CO 等の排出量制限、粒子数(PN)など厳格な基準 |
| 北米(米国) | U.S. Environmental Protection Agency (EPA) 規制、EPA Tier 3 など | ライトビークル(乗用車・小型トラック等) | CO₂/GHG排出基準、NOx・PMなどの大気汚染物質規制、燃費基準 |
| オーストラリア 等 他国 | 国際基準に基づいた排ガス・燃費基準 | 乗用車等 | CO₂/燃費基準・排ガス抑制を目的とした規制 |
このように、世界の多くの地域では「PM/NOx/CO など有害排出物の厳格規制」「燃費やCO₂排出量の削減義務」「排ガス試験の国際基準の採用」などが導入されており、日本だけでなくグローバルに排ガス対策が進んでいます。
日本との違い
では、日本の基準と比べて、海外(特に欧州・北米)ではどこが違うのでしょうか。主なポイントは以下の通りです。
- 規制の厳格さと対象の広さ
欧州の Euro 6 や北米の EPA 規制では、PM や NOx に加えて「粒子数(PN)」「温室効果ガス(CO₂)」まで含めた包括的な規制が多く、非常に厳しい制限が設けられています。一部の国では、販売車両すべてに対してこの基準が義務。日本でも同様の排ガス基準はあるものの、国ごと・地域ごとの差や、対象の車両範囲には若干のズレがあります。 - 基準の更新頻度
国際基準は定期的に見直されており、欧州では 2020年代でも改定が続いています。日本も近年 規制強化を進めていますが、世界的な流れの速度と比べると“ややゆるやか”な部分もあります。日本国内の直噴車への PM 規制適用も最近の事例です。 - 輸入車・海外仕様車の扱い
海外仕様車は「その国での排ガス基準」に合わせて設計されているため、日本または輸入先国での認証が必要なケースがあります。欧州基準車や北米仕様車を日本に持ち込む場合、排ガス区分の確認が必須です。
まとめると、「海外の規制は非常に厳格」「常に更新されている」「輸入車は適合チェックが重要」という点で、国内基準とのギャップがあります。

輸入車や海外仕様車購入時の注意点
海外仕様の車や並行輸入車を購入・輸入する場合、次のような注意点があります。
- 排ガス基準の適合確認を必ず行うこと
海外仕様のままでは、日本の検査(車検)に通らない可能性があります。販売店やディーラーに「日本の排ガス基準に適合するか」を確認してください。 - 改造歴・排ガス対策装置の有無をチェック
欧州では排ガス後処理装置(触媒・DPFなど)の搭載が義務でも、日本の基準を満たすことが条件。装置の履歴や適合証明の確認が必要です。 - 将来の規制強化に備える
今後、日本でも欧州並みの規制強化が進む可能性があります。特に古めの輸入車は、今後の排ガス基準「改定」に弱いため、長期維持を考えるなら慎重に。
輸入車や海外仕様車をお持ちの方、購入を検討している方は、「排気ガス規制」という視点を必ず入れておきましょう。それが、あとあと後悔しないための大事なチェックになります。
今後の規制の見通し
排気ガス規制の方向性は、世界全体で「排出量を減らす」ことを優先する流れが続いています。
特に電動化や省エネ技術が進んでいることから、今後も環境負荷の低い車への移行が求められる状況は変わりません。
ただし、将来どのような規制が具体的に導入されるか、いつ実施されるかについては、現時点で明確に発表されていない部分も多く、確実な情報のみに基づいて説明します。
電動化・ハイブリッド・EV普及の流れと排ガス規制の関係
現在、自動車メーカー各社が電動化を強化している背景には、燃費向上義務や排ガス基準が国内外で段階的に厳しくなってきたことがあります。
基準が強化されるたびに、メーカーはハイブリッド技術やモーターアシストを活用し、排出ガスを抑える方向へ開発を進めています。
日本でも電動化を促す政策や補助制度が継続しており、これに合わせて排出基準が厳格化されてきた経緯があります。
現時点で「今後どの基準がいつ追加される」と確定している発表はありませんが、電動化シフトと排ガス規制は今後も連動するとみられます。
古い車・バイクの登録や継続が難しくなる可能性
日本ではすでに一部自治体で、特定年式より古いディーゼル車に対する使用制限が実施されています。
こうした措置は公式に制度化されたものであり、対象となる地域や年式が明確に示されています。
ただし、全国的に「古い車が登録できなくなる」「車検で通らなくなる」といった新しい規制が決まっている事実はありません。
現時点で公表されているのは、既存の排ガス基準を満たさない車両に対し、一部地域で使用制限を行う制度だけです。
それ以上の広範囲な規制が予定されているという確定情報はありません。

地域による差、将来想定される追加規制
現在も自治体によって取り組み方に差があり、東京や神奈川のように独自の条例で「適合していないディーゼル車の乗り入れを制限」する地域もあります。これらはすでに施行されている明確な制度です。
将来的に、ほかの自治体が同様の取り組みを検討する可能性はありますが、現時点で具体的に公表されている新しい規制内容はありません。
追加の排ガス規制や地域ごとの制限について、国や自治体が正式な方針を発表しているもの以外は不明です。
規制対象車をどうするか? 買取・廃車・処分の選択肢と注意点
排気ガス規制の対象となる車は、エリアや年式によって扱いが変わるため、売却・廃車・乗り換えを検討する際には注意が必要です。
規制区域内では需要が下がるケースがある一方、地域によってはまだ価値が残る例もあります。
規制車の買取事情:価値が落ちるのか/査定ポイントは?
規制の対象になる車は、規制区域では再販が難しくなるため買取額が下がる傾向があります。ただし、全国的に一律で価値が下がるわけではなく、地域や中古車市場の需要によって評価が変わる場合もあります。
査定では、排ガス基準への適合状況・走行距離・エンジンの状態・車体の損傷の有無など、通常の中古車と同じ項目に加えて、規制の影響で再販ルートが限られるかどうかが判断材料となります。
確実な情報として言えるのは「規制区域では買取の選択肢が減る」「適合していない車は再販の幅が狭まる」という点です。
無料回収サービスや廃車業者の活用方法
排ガス規制で乗り続けられない車の場合、廃車業者の利用は有力な選択肢になります。
多くの専門業者は、レッカー代や手続き代行を無料で提供しており、規制対象車でも引き取りが可能です。
特に、車としての再販が難しくても、金属・パーツとして価値がある場合は「無料回収」だけでなく「買取」が適用されることもあります。
廃車手続きに必要な書類や処理手順は制度として決まっているため、確実な方法としては、専門業者に依頼し、必要書類(車検証・印鑑・リサイクル券など)をそろえて進めるのが最も安全です。
規制を見据えた「賢いクルマ・バイクの乗り方」提案
排気ガス規制が段階的に進む中で、今の車・バイクをどう扱うかは大きなテーマになっています。
環境対応車・低排出車への買い替えメリット
環境対応車や排出ガスの少ないモデルに乗り換える最大のメリットは、規制強化の影響を受けにくくなることです。
規制が厳しくなると、古い基準の車は使える場所が限られたり、税負担が変わる可能性があります。
一方で、低排出車は燃費性能や静粛性が向上している場合が多く、日常の使い勝手も良くなる傾向があります。
はっきり言えるのは「今後の規制に左右されにくい」という点で、安心して乗り続けられるところが大きな利点です。
維持コストとのバランスの考え方
車を買い替えるか、今の車を維持するかを考えるときに重要なのは、維持費・燃料費・税金などを含めて総合的に比較することです。
古い車は、燃費が悪かったりメンテナンス費が増えたりすることがあるため、長期的に見るとコストがかさむ可能性があります。
逆に、今の車が不調もなく安定して走るなら、すぐに買い替える必要はありません。
確実に言えるのは「規制で使えなくなる可能性がある車は、早めに方向性を考えておくと安心」ということです。
普段のメンテナンスでできる排ガス対策
排ガス対策は、新車に買い替えるだけが方法ではありません。普段のメンテナンスでも排ガスの状態は変わります。
確実に効果がある方法としては、エンジンオイルの定期交換、エアフィルターの清掃・交換、スパークプラグの点検など、基本的な整備を丁寧に行うことが挙げられます。これらは燃焼効率を保ち、排ガスをきれいにするのに役立つことが知られています。
また、無理な加速を避けたり、適切な空気圧で走ったりすることもエンジン負荷を減らす助けになります。
まとめ — 今後のカーライフと排気ガス規制をどう考えるか
排気ガス規制は突然変わるものではなく、段階的に進んでいくため、今のうちから自分の車・バイクがどの基準に適合しているかを把握しておくことが大切です。
車によっては今後使えるエリアが変わる可能性もあるので、“どのくらい乗り続けたいか” “いつ買い替えるのが適切か” を早めに考えておくと安心です。

規制に適した車に乗り換える
もし今の車が古い基準のままで、今後の規制に影響を受ける可能性があるなら、早い段階で乗り換えを検討するのも一つの方法です。
規制に適合した車なら、将来的な制約を気にせず乗り続けられますし、維持費が予測しやすくなるという安心感があります。
カーライフを長期的に見て、無理のないタイミングで判断するのがおすすめです。
お乗り換えで車の処分する際は、廃車ひきとり110番にお気軽にご相談ください!









