車の輸送方法にはどんな手段がある?
陸送:トラックでの移動
陸送は、専用の車両積載トラック(キャリアカー)で車を目的地まで運ぶ方法です。もっとも一般的で、個人間売買や引越し、廃車の引取りなど幅広いシーンで利用されています。
- オープンキャリア:複数台積載できコストが安いが、車両はむき出しで運ばれるため、天候や飛び石の影響を受けやすい。
- クローズドキャリア(密閉型):高級車やカスタムカー向け。外部からのダメージを防げるが、費用は高め。
配送エリアの自由度が高く、自宅や修理工場へのドア・ツー・ドア輸送が可能な点が魅力です。
鉄道輸送:電車を利用した移動
鉄道輸送は、JR貨物のコンテナや専用車両に車を載せて運ぶ方法です。現在ではあまり一般的ではないものの、一部の業者を通じて利用できます。
- メリット:距離が長い場合でも、燃料費や高速料金に影響されず一定のコストで済む。
- デメリット:駅間輸送なので、出発地・到着地ともに別途トラック輸送が必要になることが多く、手間と時間がかかります。
主に法人利用や特殊輸送向けで、個人で使う機会は限られています。
海上輸送:フェリーや貨物船の利用
海上輸送は、フェリーや貨物船で車を運ぶ方法で、北海道・沖縄・離島間などの長距離移動に使われます。
- フェリー:運転手が車を乗せたまま移動するケースが多いですが、「車両のみ預けて輸送する」航路もあります。
- 貨物船輸送:業者が預かった車を専用船に積載し、港から港へ運ぶ形式。
海上輸送は長距離でのコストパフォーマンスが高く、陸送よりも安いケースもあるのが特徴。ただし、出航日や天候に左右されやすいため、納期の柔軟性が必要です。
空輸:飛行機による輸送
空輸は、航空機で車を輸送する最速手段ですが、非常に高額です。
- 通常は高級車・展示用車両・モータースポーツ用車両など限られた目的で利用されます。
- 国内線で対応可能な空港は限られており、到着後の輸送も別途必要です。
スピードが求められる特別なケースに限られ、一般利用には現実的ではありません。
それぞれの輸送方法のメリット・デメリット比較
輸送手段 | 主なメリット | 主なデメリット | 向いているケース |
---|---|---|---|
陸送(トラック) | 柔軟な配送先対応、最も普及 | 距離によって費用増、天候の影響(オープン) | 廃車、売却、引越し全般 |
鉄道輸送 | 長距離でも料金が安定 | 駅間のみの対応で手間が多い | 法人輸送、大量輸送向け |
海上輸送 | 長距離で安価、離島対応 | 日数がかかる、天候に左右される | 沖縄・北海道・離島間輸送 |
空輸 | とにかく速い | 圧倒的に高額 | モーターショー、緊急輸送 |
車の輸送にかかる費用と相場は?
輸送距離ごとの目安金額
車の輸送費は、基本的に「距離」と「輸送手段」によって変動します。陸送(トラック輸送)を基準にした大まかな相場は以下の通りです。
距離の目安 | 輸送費の相場(軽~普通車) | 輸送にかかる日数 |
---|---|---|
〜50km以内 | 約8,000円〜15,000円 | 当日〜翌日 |
100〜200km | 約15,000円〜30,000円 | 1〜2日 |
300〜500km | 約25,000円〜50,000円 | 2〜3日 |
500〜1,000km | 約40,000円〜80,000円 | 3〜5日 |
1,000km超 | 約80,000円〜120,000円以上 | 5日〜1週間 |
※距離やエリア、車種、時期(繁忙期かどうか)で変動あり
※離島や海外輸送の場合は別途海上輸送・通関費が必要
自走可能/不動車で費用はどう変わる?
輸送対象の車両が自走できるかどうかも、費用に大きく影響します。
- 自走可能な車
→ 積み降ろしが簡単で、特殊な機材を使う必要がないため基本料金のみで対応可能。 - 不動車・事故車・車検切れ車
→ ウインチ付きトラックやフォークリフトなどの特殊積載機材が必要。これにより 追加費用(5,000円〜20,000円) が発生することがあります。
また、不動車の場合は引取り・積み込み時にスタッフ2名での対応になることもあり、人件費が上乗せされるケースもあります。
保険や追加オプションの料金
輸送中のトラブルに備えた「輸送保険」や、利便性を高める「追加オプション」も、最終的な費用に関係します。
輸送保険(車両損害補償)
- 通常は基本保険料が無料〜数百円程度で付帯されますが、補償上限が低い場合あり
- 希少車・高級車の場合は、別途「車両価格に応じた保険料(例:1,000万円で3,000〜5,000円)」が必要になることも
よくあるオプション例
- 日時指定・時間帯指定輸送:+2,000〜5,000円
- クローズドキャリア指定:+10,000円以上(高級車向け)
- 車内荷物運搬サービス:+1,000〜3,000円(可否は業者による)
- 屋内保管(待機中):+日数ごとに500円〜
必要に応じて取捨選択することが、ムダな出費を防ぐポイントです。
輸送費を安く抑えるコツ・相見積もりの重要性
車の輸送費は、選ぶ業者や条件によって大きく変動します。少しでもコストを抑えたい場合は、以下の5つの工夫が効果的です。
1. 相見積もりを取る(3〜5社)
輸送費を抑える最も基本的かつ効果的な方法が、複数の業者から見積もりを取ることです。たとえば同じ移動距離・車両条件でも、業者ごとに1万〜2万円以上の差が生じることがあります。
最近では、一括見積もりサイトや車輸送専用の比較サービスも増えており、手間をかけずに3〜5社程度の料金やサービス内容を簡単に比較できます。見積もりの際は、単に価格を見るだけでなく、保険の有無、車両の取り扱い実績、レビューなどもチェックしておくと安心です。
2. 時期を選ぶ
車輸送には「繁忙期」と「閑散期」があり、これをうまく見極めて依頼することで料金に大きな差が出ます。繁忙期にあたるのは主に3月(引越しシーズン)・8月(お盆休み)・12月(年末年始)などで、この時期は依頼が集中し、料金が高騰しやすくなります。
一方、1月や6月など比較的落ち着いた時期に依頼すれば、通常より2〜3割安くなるケースも。引越しや売却のタイミングに柔軟性がある場合は、あえてオフシーズンを狙って依頼するのも大きな節約につながります。
3. オープンキャリア+長期日程にする
車を輸送する際には、トラックの種類や輸送日程の指定方法によっても料金が変わります。オープンキャリア(屋根なしの積載車)を利用し、「日程おまかせ」「混載便」などを選ぶと、割安な料金での輸送が可能です。
特に、他の車と一緒にまとめて運ぶ混載便では、業者側の効率も良くなるため、料金が安くなる傾向があります。輸送の急ぎ度が低い場合や、数日〜1週間ほど余裕があるなら、日程に柔軟性を持たせることで大きく節約できます。
4. 自走可能な状態にしておく
車が自走できるかどうかは、輸送費用に大きく影響します。たとえば、車検切れや故障車の場合は、積載車による特殊な対応やウインチの使用などが必要となり、追加料金が発生します。
一方、バッテリーやブレーキ、タイヤなどを点検しておき、自走可能な状態にしておけば、より安価なプランの利用が可能になります。車検が切れている場合は仮ナンバーを取得するなどの方法もありますが、それらの手続き費用を考えると、やはり状態の良い車のほうが輸送費は抑えやすくなります。
5. 荷物は載せない
輸送中の車内には基本的に私物を載せてはいけません。というのも、多くの業者では法令や保険の関係で、輸送車両内に荷物があると輸送を断ったり、追加料金を請求することがあります。
荷物の積載は車両の重量オーバーにつながる可能性もあり、事故やトラブルの原因になるため、万が一荷物を積む場合でも事前に業者の確認を取る必要があります。確実に安く、スムーズに輸送するためには、車内を空にして引き渡すのがベストです。
車の状態によって輸送方法は変わる?
車検切れ・ナンバーなしの車を運ぶ方法
車検が切れていたり、ナンバーがない車両は公道を自走できないため、輸送方法に制限があります。主に以下の方法が利用されます。
- 陸送(トラック積載)での移動
積載車(積車)を使って、目的地まで運ぶのが基本。ナンバーの有無に関係なく対応可能。 - 仮ナンバーを取得して自走(一部ケースのみ)
車検切れでも、市役所などで「仮ナンバー(自動車臨時運行許可証)」を取得すれば、一時的に公道走行が可能。ただし保険加入や整備条件があるため現実的には近距離移動向け。 - 廃車専門業者の無料引取サービス
廃車目的であれば、専門業者がレッカー車で無料引取してくれる場合も多く、手間もコストも抑えられます。
※ナンバーなし車両は行政申請や保険の扱いが異なるため、専門業者に任せるのが無難です。
カスタムカーや希少車の特別輸送
カスタム車・クラシックカー・スーパーカーなど、価値や構造が特殊な車両は通常の混載輸送ではリスクが高いため、次のような配慮が必要です。
- クローズド(密閉式)キャリアでの輸送
雨風や飛び石から保護できるため、塗装や外装にこだわる車両向け。費用は割高(通常の1.5〜2倍)が安心感は高い。 - パーソナル便(単独輸送)
複数台まとめて運ぶ混載便ではなく、1台のみを専属で運ぶ形式。スケジュールも柔軟で扱いが丁寧。 - 積載方法のカスタマイズ
エアロパーツが低い車やローダウン車は、低床車やスロープ角が緩やかな積載車が必要な場合も。
また、万が一に備えて輸送保険の補償上限を必ず確認し、必要に応じてオプション加入を。
故障車・事故車はどうやって運ぶ?
故障や事故で動かない車も輸送可能ですが、通常とは異なる対応が求められます。
- ウインチ付きの積載車による引き上げ
タイヤが動かなくても、引っ張り上げて積載できる専用車両を使用。手動作業が多いため追加費用がかかることも。 - レッカー車での積載移動(短距離)
現場から近距離移動(例:整備工場への搬送)であれば、レッカー対応がスムーズ。 - フォークリフト搬入(重度破損時)
足回り破損などでタイヤが動かない場合、フォークリフトでの積載が必要になることもあります。
故障車は「ブレーキが効くか」「ギアがニュートラルに入るか」で輸送方法が変わるため、事前に状態確認を業者に伝えることが重要です。
車両のサイズが与える影響
車両の全長・全幅・車高・重量は、輸送費や手段の選択に直結します。
サイズ・重量条件 | 影響・注意点 |
---|---|
全長5m以上・大型車 | 積載トラックの対応力に制限あり。追加費用(+3,000円〜) |
全幅1.9m超の車両 | 車両間の間隔が狭い混載便では不可の場合あり |
車高が2m以上 or ローダウン | キャリアへの積み降ろしに専用設備が必要。車種申告必須 |
2t超の重量級車両 | 高重量対応のトラックが必要。輸送費が2倍程度になることも |
特殊サイズ車は、見積もり時に必ず車検証をもとにサイズを伝えることで、トラブルや追加費用の回避ができます。
輸送前の車両チェックポイント
輸送前には、安全かつスムーズに運んでもらうための事前チェックが必要です。以下の項目を確認しておきましょう。
チェック項目 | 内容 |
タイヤ空気圧 | パンクや空気抜けがないか。積み降ろし時に影響します。 |
バッテリー | 自走や電動パーツが作動するか。故障車でなくても要確認。 |
外装の状態 | 傷・凹み・ミラーの破損などを事前に記録。輸送中の破損と区別できます。 |
車内の荷物 | 輸送中の転倒や破損防止のため、荷物は基本的に降ろす。積載不可の業者も多いです。 |
アラームやセキュリティ | 輸送中に誤作動しないように、事前に解除またはオフにしておくこと。 |
あわせて、ガソリン残量を1/4〜1/2程度に調整しておくと、重量が抑えられ安全です(満タンにしておく必要はありません)。
目的別|最適な車の輸送方法とは?
引越しで車を運ぶ場合
引越し時の車両輸送は、「距離・時期・引越し業者との連携」がポイントです。
主な輸送手段
- 陸送(キャリアカー):日本国内の引越しでは最も一般的。自走不要で安心。
- フェリー輸送+港から陸送:離島や長距離引越し(北海道〜九州など)で使われるケースも。
- 引越し業者とのパック輸送:大手引越し会社では、家財と車の輸送をセットにしたプランもあり、手配が一括で済むメリットあり。
注意点
- 繁忙期(3月・4月・9月)は早めの予約が必須。料金も高騰しやすい。
- 車の到着が引越し先よりも遅れる場合があるため、日程調整をしっかり行うこと。
ネットオークション・売却先への輸送
個人売買やオークションで車を売却した場合、購入者や買取店へ安全に車両を届ける輸送手段が必要です。
主な輸送手段
- 混載陸送(業者による積載輸送):コストを抑えたい場合に最適。
- 売却先が輸送を手配するケースも多い:ガリバーやオークネットなど、提携輸送業者を使う場合は費用が差し引かれることも。
注意点
- 名義変更・保険切替のタイミングに注意。輸送中のトラブル時に誰の責任かが曖昧になりやすいため、輸送前の書類手続きを完了させるのが理想。
- 車両の状態をしっかり記録しておく(傷・走行距離・写真など)。トラブル防止に。
廃車・処分のための車輸送
車を処分する場合、車検切れや故障で自走できないことが多いため、専門の輸送方法が必要になります。
最適な手段
- 廃車専門業者の無料引取サービス:不動車やナンバーなしでもOK。レッカー車で直接引き取りに来てくれる。
- 自走可能なら解体業者へ持ち込みも可:ただしガソリン代・時間・人手がかかるため非効率。
廃車輸送のポイント
- 輸送費が無料になることが多い(業者が車を資源として再利用するため)。
- 引取後に一時抹消・解体届などの手続きも代行してもらえる場合あり。時間や労力をかけたくない人におすすめ。
一時帰国や長期保管時の輸送ニーズ
海外赴任や長期旅行などで一時的に車を保管したい場合、輸送と保管をセットで考える必要があります。
輸送手段
- パーソナル陸送で保管場所まで運搬:セカンドハウスや実家などに車を送るケース。
- 保管サービス付きの車両管理業者へ輸送:車両保管専門施設に預けることで、車の劣化防止にも。
注意点
- バッテリー上がり・タイヤ変形などの防止策が必要。
- 長期保管中の自動車保険・車検ステータスの管理も重要。抹消登録(長期保存)する選択も。
廃車の際におすすめな輸送方法
廃車引取りサービスの利用
廃車を検討している多くの方にとって、最も手軽で効率的なのが「廃車引取りサービス」です。車が動かない状態でも問題なく、自宅や駐車場までレッカー車で引き取りに来てくれるため、移動の手間が一切ありません。特に車検切れ・バッテリー上がり・故障車などは自走ができないケースが多いため、こうしたサービスの需要が高まっています。
また、多くの廃車専門業者は、引取りを「無料」または「買取付き」で対応しており、処分費用がかからないどころか、逆に現金化できる場合もあります。書類手続きの代行も含めてワンストップで任せられるため、時間がない人や車の処分に不慣れな人にも適しています。
解体業者への直接搬入
動く車であれば、自ら解体業者へ車を搬入するという選択肢もあります。費用を少しでも抑えたい人や、業者が近所にある場合には有効な手段です。業者によっては「持ち込み割引」や「買取価格アップ」などの特典を用意しているところもあり、自力搬入には一定のメリットがあります。
ただし、車検が切れていたり、ナンバーが返納済みだったりする車の場合は公道を走れないため、自走搬入はできません。また、積載車や仮ナンバーの準備などが必要になるケースもあり、知識や手間が求められる点には注意が必要です。
手間をかけずに廃車を進めるためのアドバイス
廃車は「手続き・輸送・解体」という複数の工程があり、慣れていないと時間も労力もかかります。そこでおすすめなのが、専門業者に一括で任せる方法です。廃車の引取りから必要書類の作成・提出、抹消登録の代行までをまとめて対応してくれる業者を選べば、最短で即日対応も可能になります。
特に平日時間が取れない方や、車の名義変更やローン残債などの事情がある場合は、実績ある業者に相談することでスムーズに進められます。「少しでも高く売りたい」「書類がややこしいのは苦手」という方は、最初から信頼できる廃車専門業者に問い合わせるのが賢明です。
まとめ|目的に合った車の輸送方法を選ぼう
車の輸送は「目的」と「車の状態」によってベストな方法が異なります。中でも廃車や不動車の輸送については、個人で手配するよりも専門の業者に任せる方が安心で効率的です。引取り対応から書類のサポート、さらには買取金額まで含めた総合的なサービスが整っている業者を選ぶことで、ストレスなく手続きを完了できます。
特に不動車や事故車のように自走が困難なケースでは、レッカー費用や移動手段の確保が大きな負担となるため、無料引取サービスや出張対応を提供している廃車専門店の利用が最適です。車を手放す目的に応じて、輸送手段も賢く選びましょう。