1. お車ユーザーの豆知識

タイヤ交換のタイミングを正しく判断する|残溝・寿命・製造年数の3つの基準

タイヤの交換時期を判断する際、一般的に目安とされるのは「溝の深さ」です。しかし、自動車の安全を預かるプロの視点から見ると、溝だけでは判断できない重要な要素がいくつか存在します。

タイヤ交換の判断基準となる「摩耗(溝)」「経年劣化(寿命)」「保管期間」の3つのポイントについて、法的な基準と安全上の推奨ラインを交えて解説します。

溝の深さ


溝の深さと交換ライン(摩耗による限界)

新品のノーマルタイヤ(夏タイヤ)の溝の深さは、一般的に約8mm(7〜9mm)程度です。

タイヤを使用すると徐々にゴムが摩耗していきますが、どこまで使用可能なのでしょうか。

法的な使用限界「スリップサイン」

タイヤの溝が残り1.6mmになると、溝の奥にある「スリップサイン」という突起がトレッド面(接地部分)と同じ高さに現れます。

道路運送車両法の保安基準により、スリップサインが1箇所でも露出したタイヤで公道を走行することは禁止されており、車検にも通りません。

プロが推奨する「安全上の交換時期」

法律上は1.6mmまで使用可能ですが、安全面を考慮すると「残り3mm〜4mm」程度での交換を強く推奨します。
理由は、溝が浅くなると雨天時の排水性能が著しく低下するためです。

特に残り溝が4mmを下回ると、濡れた路面での制動距離が急激に伸びたり、水の上を滑る「ハイドロプレーニング現象」が起きやすくなったりと、事故のリスクが高まります。

スタッドレスタイヤの場合

スタッドレスタイヤには、スリップサインとは別に、新品時から50%摩耗した地点に「プラットホーム」という目印が設けられています。
これが露出すると、冬用タイヤとしての性能(氷雪路でのグリップ力)は機能を果たさなくなります。

プラットホーム露出後は、法的には夏用タイヤとして使用継続が可能ですが、雨天時の性能やドライ路面での制動能力は通常の夏タイヤに劣るため、早めの交換が望ましいでしょう。

スリップサイン

タイヤのスリップサイン。このサインのあるところの溝の底がポコっとなっていますのでそれが表面に出ているとアウトです。

かたべりタイヤ

十分な溝深がないタイヤ。雨の日など危険です。

溝が残っていても交換が必要な場合(経年劣化による寿命)

「走行距離が少なく、溝が十分に残っているから大丈夫」と考えるのは危険です。

タイヤはゴム製品であり、時間の経過とともに化学変化を起こし劣化していきます。

ゴムの硬化とひび割れ

タイヤのゴムは経年とともに油分が抜け、硬化していきます。ゴムが硬くなると路面を掴む力(グリップ力)が低下し、スリップしやすくなります。
また、タイヤの側面(サイドウォール)や溝の底に「ひび割れ(クラック)」が発生している場合はさらに注意が必要です。

軽微なひび割れであれば経過観察で済む場合もありますが、内部のコード(骨格)に達するような深いひび割れは、走行中のバースト(破裂)につながる恐れがあり大変危険です。

5年経過したら点検を推奨

使用環境や保管場所(青空駐車かガレージか等)によって劣化スピードは異なりますが、一般的に使用開始から5年が経過すると、ひび割れや硬化が目立つようになります。
タイヤメーカー各社も、使用開始から5年経過したタイヤについては、継続使用が可能かプロによる点検を受けることを推奨しています

タイヤひび

ひび割れしており危険です。

タイヤ製造年式

2016年第6週製造という意味です。タイヤの側面に打刻してあります。

タイヤ寿命

タイヤ安全ニュースNo.72 JATMAより

未使用・新品タイヤの「消費期限」

「未使用品であれば、いつまでも新品同様」というわけではありません。適正な環境で保管されていたとしても、ゴムの劣化はわずかながら進行します。

メーカー見解による保管期限

大手タイヤメーカーの見解では、適正に保管された新品タイヤ(夏用・冬用問わず)は、製造から3年間は同等の性能を保つとされています。
一般的に夏タイヤはスタッドレスタイヤに比べてゴム質が硬く耐久性が高いため、5年程度経過した未使用品が流通することもありますが、性能を最大限発揮できる期間としては「3年」が一つの目安となります。

製造時期(セリアルナンバー)の確認方法

タイヤの側面には、製造時期を示す4桁の数字(セリアルナンバー)が刻印されています。
(例:「0625」の場合)

  • 前の2桁「06」:その年の第6週(2月中旬頃)に製造

  • 後の2桁「25」:2025年に製造

これにより、そのタイヤがいつ作られたものかを正確に知ることができます。

中古市場や個人売買の注意点

近年、ネットオークションやフリマアプリで「未使用品」や「バリ山(溝が深い中古品)」が安価で取引されています。しかし、これらの中には製造から10年以上経過した古いタイヤが含まれているケースも少なくありません。
ゴムが完全に硬化した古いタイヤは、いくら溝があっても本来の安全性能を発揮できません。

命を乗せて走る部品ですので、製造年数が古すぎるタイヤの購入は避けるべきです。

まとめ

安全なカーライフのために、タイヤ交換は以下の3つの視点で判断しましょう。

  1. 溝の深さ:スリップサイン(1.6mm)が出る前、できれば3〜4mmでの交換が安全。

  2. 外観の劣化:側面のひび割れやゴムの硬化が見られたら要注意。

  3. 経過年数:使用開始から5年以上、または製造から10年以上経過したタイヤは、溝があっても交換を検討する。

ご自身のタイヤの状態が判断できない場合は、お近くの整備工場やタイヤ専門店にてプロのチェックを受けることをおすすめします

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