霊柩車とは何か
霊柩車とは、故人を安置している施設から火葬場や葬儀式場へと搬送するための車両です。
葬送の最後の道を見送る役割を担っており、単なる移動手段ではなく「故人を敬意を持って送り届ける」ための重要な役割を持ちます。
国や地域、文化によってその形状やデザインは異なり、時代とともに変化してきました。

霊柩車の役割と目的
霊柩車の主な役割は、故人を安全かつ丁寧に火葬場へ搬送することです。遺族の心情に配慮しながら、静かで安定した運行が求められます。また、葬送の「儀式性」を担う側面もあり、地域によっては霊柩車が葬列や故人の社会的な立場を象徴する場合もあります。
「最後の旅路」を整える、精神的な役割も含んだ車両といえます。
普通車との構造・装備の違い
霊柩車は市販車をベースにしながらも、後部スペースが専用構造に改造されています。
棺を安定して積載するためのフラットな床、棺を滑らせるローラー、固定用レール、内装の防音・防振構造などが特徴です。また、外観も用途に合わせて装飾が施されることがあり、宮型霊柩車では神殿のような屋根飾り、洋型やバン型では落ち着いたトーンの内装・外装が採用されます。
霊柩車の世界的な利用状況
霊柩車は世界中で利用されていますが、そのデザインは地域によって大きく異なります。
欧米ではリムジンタイプが主流で、落ち着いた黒・ダークグレーが多く用いられています。
一方、日本や一部のアジア地域では、かつて装飾が強い宮型霊柩車が葬送文化の象徴として用いられていました。
イスラム圏や南アジアでは、地域の宗教観に沿った簡素な搬送車両が一般的です。このように、霊柩車は文化や宗教観を反映しながら発展してきました。
葬送文化における霊柩車の位置づけ
霊柩車は、故人を敬意を持って見送るための「葬送儀礼の中核的な存在」とされています。
故人が生前どのように生きたのか、どのような社会に属していたのかを象徴する場面でもあり、葬儀全体の雰囲気を形成します。
近年は派手さよりも「静かに寄り添う」デザインや運行が重視され、儀式性よりも遺族の心情に配慮した形へと変化しています。
霊柩車にまつわる法律と規制
日本では、霊柩車は道路運送車両法に基づく「特殊用途自動車(霊柩車)」として分類されます。
改造部分が多いため、車検時には構造確認が必要となり、装備や寸法が保安基準に適合していることが求められます。また、運行にあたっては自治体によって取り扱いルールが異なる場合があり、葬儀社や搬送事業者が管理者として適切な維持・点検を行うことが義務付けられています。

霊柩車の種類
霊柩車は大きく「宮型」「洋型」「バン型」の3つに分類されます。
それぞれの形状は、地域の文化や葬送に対する価値観を反映しており、時代とともに選ばれ方も変化しています。
宮型霊柩車
宮型霊柩車は、日本独自の伝統を色濃く反映した霊柩車で、車両の後部に神殿のような装飾が施されているのが特徴です。
かつては「葬送の象徴」として広く用いられていましたが、近年は控えめな葬儀が増えたことから使用は減少傾向にあります。
洋型霊柩車
洋型霊柩車は、リムジン型の車両をベースに後部を棺輸送用に加工したタイプです。
装飾は控えめで落ち着いた外観が特徴で、現在の主流となっています。都市部を中心に全国的に広く利用されています。
バン型霊柩車
バン型霊柩車は、商用バンをベースに棺搬送用に改造したタイプです。装飾が少なく、機能性・取り回しやすさに優れています。
家族葬など小規模な葬儀が増えている現代で、利用シーンが拡大しています。
形状・地域性によって異なる表現の違い
霊柩車は単に車種が異なるだけでなく、地域の宗教観や葬儀の慣習によって外観や選ばれ方が変化します。
下の表に各タイプの特徴と地域性をまとめました。
| 種類 | 外観の特徴 | 主な利用地域 | メリット | 近年の傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 宮型霊柩車 | 後部に神殿のような豪華な装飾 | 主に地方都市や伝統的葬儀が残る地域 | 儀式性が高く、厳粛な印象を与える | 使用・保有ともに減少傾向 |
| 洋型霊柩車 | リムジンベース、上品で控えめな外観 | 全国的に広く普及 | 上品で現代的、どの形式の葬儀にも合わせやすい | 現在の主流 |
| バン型霊柩車 | 商用バンを改造した実用型 | 都市部・家族葬が多い地域で増加 | 取り回しが容易、派手さを抑えた送迎が可能 | 利用が急増中 |
中古霊柩車の市場について
霊柩車は葬儀の専門車両であり、新車は特別な架装加工や素材が用いられるため高額になります。
そのため、一定期間使用された霊柩車が中古市場に流通し、葬儀社や自治体、個人によって再利用されるケースが増えています。

なぜ中古霊柩車が流通するのか
霊柩車は葬儀社が定期的な車両更新を行うため、中古として流通することがあります。
特に葬儀業界では、車両の「清潔感」や「イメージ」が重要視されるため、走行距離が少なくても一定年数で入れ替えることが一般的です。また、架装された車両は耐久性が高く、まだ使用できる状態で中古市場に出回ることが多いのが特徴です。
中古霊柩車の価格相場
中古霊柩車の価格は、車種、年式、走行距離、架装タイプ、外観コンディションなどによって大きく変動します。
- 宮型霊柩車:80万円~300万円程度
- 洋型霊柩車:50万円~250万円程度
- バン型霊柩車:30万円~180万円程度
新車価格は数百万円~1,000万円超になる場合もあるため、中古車は「初期費用を抑えられる」点で人気があります。
購入のメリットとデメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 新車に比べて大幅に購入費用を抑えられる | 外装・内装の劣化がある場合がある |
| 既に葬儀用設備が搭載されているため即使用できる | 車両の印象が古いと葬儀ブランドイメージに影響する可能性 |
| 車検・整備履歴が明確な車両が多い | 架装部品の交換や修理が通常車両より高額になりやすい |
購入時のチェックポイント
中古霊柩車を購入する際には、以下の点を確認することが重要です。
- 架装部分(棺台、照明、内装材)の状態に破損や腐食がないか
- 法規に沿った装備・表記が残っているか
- 走行距離と整備記録簿がしっかり残されているか
- 外観が葬儀社のブランドイメージに適しているか
- 地域習慣に合った霊柩車のタイプかどうか
中古霊柩車はどこで買えるか
中古霊柩車は以下のようなルートで購入可能です。
- 専門の霊柩車販売業者
- 中古車オークション会場
- 葬儀社からの直接譲渡
- 架装メーカーのリースアップ車両販売
一般の中古車販売店では取り扱いが少ないため、専門業者を利用することが安心です。
霊柩車に関する文化的背景
霊柩車は単なる「移動手段」ではなく、故人を見送る文化や宗教観を反映した特別な車です。
日本では、歴史的・宗教的な背景や地域性によって、霊柩車の形状やデザイン、役割の理解が大きく異なります。

日本における死生観と「送り」の文化
日本では、故人を「現世からあの世へ送り出す」という考え方が根強く残っています。
葬儀は、故人が旅立つための儀式であり、霊柩車はその旅の「船」にあたる存在として捉えられてきました。
霊柩車が丁寧に扱われ、荘厳なデザインが好まれたのは、「最後の旅を敬意を持って見送る」という文化的価値観に基づいています。
宮型霊柩車が減少した社会的・宗教的要因
かつて日本では、金色や彫刻装飾を施した「宮型霊柩車」が多く使用されていました。
しかし、現在は大幅に減少しています。その背景には以下の要因があります。
- 宗教スタイルの多様化により、派手な装飾を好まない傾向が増えた
- 市街地での景観配慮により、派手な霊柩車が敬遠されるようになった
- 火葬場や病院の搬送経路で目立たない車両が求められるようになった
これらにより、現在は一般車に近い外観を持つ「洋型霊柩車」や「バン型霊柩車」が主流となっています。
地域による霊柩車へのイメージの違い
霊柩車に対する印象は地域によって大きく異なります。
- 関西地方:宮型霊柩車文化が比較的長く残り、葬儀に荘厳さを求める風潮がある地域も多い
- 関東地方:景観規制により洋型霊柩車が主流、落ち着いた葬送スタイルが多い
- 地方都市:地域コミュニティ色が強く、伝統に寄り添った葬送が行われやすい
地域に合わせた霊柩車選びは、葬儀社が大切にしている要素の一つです。
「派手」から「控えめ」へ移る価値観の変化
近年、「故人を静かに見送る」「家族だけでゆっくりと過ごす」など、葬儀の価値観が変化しています。
これにより、霊柩車も華美な宮型から、自然なデザインの洋型・バン型へと移り変わってきました。
この変化は、社会全体のライフスタイルの変化とも一致しています。「見せる葬儀」から「心に寄り添う葬儀」へ。
霊柩車はその象徴のひとつと言えるでしょう。
現代社会における霊柩車の役割の変化
現代の葬送文化は、生活様式や価値観の変化により大きく姿を変えつつあります。
霊柩車もまた、この変化に合わせて機能・デザイン・役割を柔軟に変化させています。

葬儀の小規模化・家族葬の増加
近年、参列者を限定した「家族葬」や「直葬(通夜や葬儀を行わない葬送形態)」が増加しています。
この背景には、少子高齢化や住まい・家族形態の多様化、葬儀費用に対する価値観の変化などがあります。
これに伴い、霊柩車は「目立つ存在」ではなく、「落ち着いた雰囲気で故人を送る車」として求められるようになりました。
大規模な葬列が組まれることは減り、霊柩車は静かに家族の時間に寄り添う役割へと移行しています。
宗教色の薄まりとデザインのシンプル化
昔ながらの宮型霊柩車は、仏教的な意匠を強調し、荘厳な雰囲気を演出するものでした。
しかし現代では、宗教や形式にとらわれない葬儀が増え、デザインはよりニュートラルで控えめな方向へと変化しています。
その結果、一般車両をベースにした「洋型霊柩車」や「バン型霊柩車」が主流となり、外観は街中でも目立ちにくい落ち着いたデザインが好まれるようになりました。「日常の延長にあるお見送り」という価値観が反映されていると言えます。
新しい車種・EV霊柩車の試み
環境配慮や静音性へのニーズを背景に、電気自動車(EV)やハイブリッド車をベースにした霊柩車も登場しています。
静かに走行できる点は「落ち着いた葬送時間」を演出しやすく、家族葬との相性も良いとされています。
さらに、車内空間や装備を柔軟にカスタマイズできるバン型車両は、実務的な利便性の高さから葬儀社に採用されるケースが増えています。
霊柩車は、単なる特定用途の車から、時代とニーズに合わせて進化する「葬送サービスの一部」として捉えられています。
霊柩車の未来
霊柩車は、これまでの伝統や文化を受け継ぎつつ、時代の変化に合わせて徐々に姿を変えています。
環境配慮技術の発展や、葬儀スタイルの価値観の変化により、霊柩車の未来はより静かで、機能的で、形式に縛られない方向へ進んでいくと考えられています。
電気自動車(EV)霊柩車の普及可能性
近年、環境問題への意識の高まりから、電気自動車(EV)をベースにした霊柩車が注目され始めています。
EVは静音性に優れ、走行中の振動も少ないため、故人を静かに、落ち着いて見送ることができます。また、排気ガスを出さない点は、火葬場や病院施設周辺の環境配慮にも適しています。
現段階では導入事例はまだ多くありませんが、葬儀の小規模化やエコ意識の浸透により、今後はEV霊柩車が選ばれる場面が増えていくと予想されます。
自動運転技術の導入の可能性
自動運転技術の進化は、霊柩車にも新しい可能性をもたらすと考えられています。
安全に一定速度で走行できる自動運転は、葬列における移動の安定性や、運転手への負担軽減につながります。
ただし、現段階では法規制や倫理的な課題も多く、「誰が最後の旅を運ぶべきか」という精神的価値も議論が必要です。
そのため、すぐに実用化されるわけではありませんが、将来的な選択肢として検討される可能性は十分にあります。

葬送サービス全体が「静かで、目立たない」方向へ進む見通し
現代の葬儀は、豪華さや見栄よりも、「故人や家族が落ち着いて過ごせる時間」が重視される傾向にあります。
そのため、霊柩車も目立つ意匠ではなく、周囲の景観に自然と溶け込むデザインが求められています。
派手な宮型霊柩車から、シンプルで落ち着いた洋型霊柩車・バン型霊柩車へと移行した流れは、今後も続いていくと考えられます。
霊柩車は、故人と家族に寄り添う「静かな移動空間」として進化していくでしょう。
買取先に悩んだら、特殊車両に慣れた専門業者の相談が安心
霊柩車は一般の自動車と異なり、内装や装備が特殊なため、処分や買い替えの際に「どこに相談すればよいのか分からない」という声が多く聞かれます。また、中古市場に出回る台数も限られているため、通常の買取店では適正な査定が難しいケースも少なくありません。
そのため、霊柩車を取り扱った経験がある専門業者に相談することで、車両の状態・仕様・需要バランスを考慮した適正な評価が受けられます。
特に車両の年式や状態に関わらず、用途や再需要を視野に入れた買取が可能な業者を選ぶことが重要です。
霊柩車も廃車ひきとり110番で買取可能です
「廃車ひきとり110番」では、宮型・洋型・バン型など、どのタイプの霊柩車でも買取が可能です。また、動かない状態や車検切れの車両でも対応できます。
- 特殊車両の取り扱い実績があるため、スムーズな査定が可能
- 不要になった霊柩車の引き取りから手続きまで一括で対応
- 全国対応、出張費・レッカー費用も全て無料!
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