車両火災とは?まず知っておきたい基本

車両火災の定義と発生件数
車両火災とは、自動車(乗用車・貨物車・バス・二輪など)で発生する火災の総称です。
走行中・停車中を問わず、車両本体や積載物が燃焼した事案が含まれます。
一般的に以下の要因が重なって発生します。
可燃物(燃料・オイル・内装材)+ 発熱源(過熱・短絡・摩擦熱)+ 酸素供給。
発生件数は地域や季節で変動しますが、毎年一定数が発生する、無視できない事故タイプです。
特に夏場(高温による過熱)や年末年始(整備不足・長距離走行の増加)に増える傾向が指摘されます。
また、車両火災は人的被害のリスクだけでなく、車両の全損・道路封鎖・周辺延焼など二次被害を招く点でも注意が必要です。
どんな車でも起こりうるのか
結論:どんな車でも起こりえます。ガソリン車・ディーゼル車はもちろん、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)でも、条件が揃えば火災に至る可能性があります。仕組みや誘因が異なるだけです。
- ガソリン/ディーゼル車:燃料・オイル漏れ+高温部(排気系・ターボ)への付着、配線の短絡、後付け電装の不具合など。
- ハイブリッド車:エンジン側の要因に加え、高電圧バッテリーやインバーター周りのトラブル(冷却不足・損傷・短絡)。
- EV:駆動用電池(リチウムイオン)の損傷・熱暴走、充電設備・配線不良、衝突による電池ケース破損など。
さらに、車齢の高い車(配線劣化・オイルにじみ)、整備不足、後付け電装の取り回し不良、可燃物の車内放置(ライター・スプレー缶・モバイルバッテリー等)、長い下りでのブレーキ多用(過熱)といった状況は、いずれの車種でも火災リスクを押し上げます。
要するに、「燃えやすい素材」と「熱(または電気異常)」が近接し、逃げ場がない状況が火災につながる――これが共通の本質です。
車両火災の主な原因
電気系統のトラブル(配線・バッテリー)
車両火災で最も多い原因のひとつが、電気系統の異常です。バッテリーや配線のショート、劣化したケーブルの接触不良、後付け電装品の取り付けミスなどが火災につながります。
特に古い車やDIYで電装品を追加した車は注意が必要です。火花や過熱が発生すると、プラスチック部品や配線被覆に引火しやすくなります。
燃料・オイル漏れによる引火
ガソリンや軽油、エンジンオイルの漏れも火災の大きな要因です。エンジンルーム下や燃料ライン周辺での漏れは、熱い排気系や摩擦熱で容易に引火します。
定期的な点検で燃料ホースやオイルシールの状態を確認することが、火災防止の基本です。
エンジンやブレーキの過熱
長距離運転や渋滞での低速走行により、エンジンやブレーキが過熱する場合があります。特にブレーキは下り坂での長時間使用で温度が急上昇し、ブレーキパッドやホイール周囲の可燃物に引火することがあります。
定期的な冷却や適切なブレーキ操作、油脂量の確認が重要です。

タバコや可燃物による火災
車内放置物も火災の原因になります。ライター、スプレー缶、モバイルバッテリー、紙類など、熱源や火花に近い可燃物は非常に危険です。
喫煙や車内での火気使用は火災リスクを大幅に高めます。
ハイブリッド車・EV車特有の火災原因
HV・EV車は高電圧バッテリーやモーターが搭載されており、従来の内燃機関車とは異なる火災リスクがあります。
- リチウムイオン電池の熱暴走(セル破損や過充電)
- バッテリー冷却不足や配線ショートによる発火
- 衝突によるバッテリーパック損傷
これらは特に事故や衝撃時に発生することが多く、従来車よりも消火が難しい場合があります。
車両火災が発生しやすい状況

炎天下や高温環境での駐車中
夏の炎天下や直射日光の下での長時間駐車は、車内温度やエンジンルーム温度が急上昇するため火災リスクが高まります。
特にプラスチック部品や可燃物が熱により変形・発火することがあります。
また、EV・ハイブリッド車ではバッテリー温度が高くなると、内部化学反応が活発化し熱暴走の可能性があるため注意が必要です。
長距離運転や渋滞中のエンジン過熱
高速道路や渋滞での低速走行、長時間の連続運転はエンジンやブレーキの過熱を招きます。
特に冷却系統が不十分な車やラジエーターに異常がある場合、オーバーヒートにより火災につながることがあります。
休憩や冷却、エンジン・ブレーキ点検が重要です。
古い車・整備不良のまま走行した場合
車齢が高い車は配線の劣化、オイル漏れ、ゴム部品のひび割れなどが進んでいることがあります。
これらが原因でショートや燃料・オイルの引火が起こりやすく、火災リスクが増加します。
日常点検や定期整備を怠らないことが火災防止に直結します。
事故や衝撃による燃料漏れ
衝突事故や路上での大きな衝撃により燃料ラインが破損した場合、ガソリンや軽油が漏れて引火することがあります。
小さな擦過傷や縁石への接触でも、燃料やオイルの微細な漏れが発火源になることがあるため、事故後は必ず燃料系統の点検を行うことが重要です。
車両火災を防ぐための対策
定期的なメンテナンスと点検
車両火災の予防で最も基本かつ重要なのは、定期的な点検と整備です。
- エンジンオイルや冷却液の量と漏れの確認
- バッテリー端子や配線の緩み・劣化チェック
- ブレーキやマフラーなど熱を持つ部位の異常確認
こうした日常点検を行うことで、火災の原因となるトラブルを未然に防ぐことができます。

電装品や後付け機器の正しい取り付け
カーナビ、ドライブレコーダー、LEDライトなどの後付け電装品は、誤った取り付けが火災の原因になることがあります。
- 配線の接続は必ずメーカー推奨方法で行う
- ヒューズやブレーカーを適切に使用する
- 自己流の改造は避ける
正しい施工で過電流やショートを防ぎ、安全性を確保しましょう。
車内の可燃物を減らす工夫
車内に放置されたライター、スプレー缶、紙類、モバイルバッテリーなどは火災の引き金になりやすいです。
- 不要な可燃物は持ち込まない
- 熱源の近くに置かない
- 車内で喫煙しない
これにより小さな火種でも大火災に発展するリスクを下げられます。
異臭・煙・異音を感じたときの初期対応
異臭(焦げた匂い)、煙、異音(キュルキュル音や金属摩擦音)を感じたら、すぐに安全な場所に停車してエンジンを切ることが重要です。
初期の兆候であれば、火災の発生を防げる場合があります。
また、異常を発見した時点で整備工場や専門家に点検を依頼することが安全対策の基本です。
火災が起きた時の正しい対処法

まず行うべきこと(停車・避難・通報)
車両火災が発生したら、まず最優先は自身と同乗者の安全確保です。
- 安全な場所に停車する(道路端や広い場所)
- 全員を車外に避難させる
- 消防署や警察に通報する(119番)
火の手が大きくなる前に避難することが、人的被害を防ぐ最も重要な行動です。
消火器の使い方と注意点
初期の火災であれば、消火器を使って火を抑えることが可能です。
使用のポイントは以下の通りです。
- 火元との距離を2〜3メートル程度確保
- 消火器のレバーを握り、火元に向かって噴射
- 風上から火に向かって使う
- 小規模の火に限定、炎が広がっている場合は避ける
ただし、バッテリーや燃料の火災は消火器でも消えにくく、無理に消そうとせず安全退避を優先してください。
やってはいけない危険行為(ボンネットを開ける等)
車両火災時にやってはいけない行為には以下があります。
- ボンネットを無理に開ける:酸素が一気に流れ込み、火が爆発的に拡大する恐れがあります
- 水をかける:特に燃料火災やバッテリー火災では逆効果になることがあります
- 車内に戻る:煙や有毒ガスで中毒や火傷の危険があります
安全確保が最優先であり、火が広がる前に避難することが最も重要です。
車両火災は保険で補償される?
車両保険でカバーされる火災の範囲
車両火災は多くの場合、加入している車両保険(一般型または限定型)で補償されます。
補償対象は主に以下の火災です。
- 自動車本体が火災で損傷した場合
- ガソリン・オイル漏れなどから発生した事故火災
- 落雷や自然災害による火災
保険証券の火災条項を確認し、免責金額や補償範囲を把握しておくことが重要です。
放火・自然発火・事故火災の違い
火災の原因によって補償の対応や手続きが異なる場合があります。
- 放火火災:他人による故意の火災。通常、保険でカバーされますが、警察への届出が必須です。
- 自然発火:車両内部の過熱や電気系統の自然発火。車両保険で補償されることが多いです。
- 事故火災:衝突・追突など事故に伴う火災。事故証明や警察報告が求められます。
原因に応じた書類提出や証明が、スムーズな保険金請求には欠かせません。

保険金を受け取るまでの流れ
火災が発生した場合の保険金請求の一般的な流れは以下の通りです。
- 火災発生後、まず消防・警察へ通報し証明書を取得
- 保険会社に事故報告・火災の詳細を連絡
- 損害調査(現場確認や写真提出、車両査定)
- 保険金額の算定・支払い
必要書類の不備や事故報告の遅れは、保険金受け取りに影響するため、早めの連絡と正確な情報提供が重要です。
過去の車両火災事故の事例
整備不良が原因となったケース
整備不良による火災は、特に古い車や長期間点検していない車で発生しています。
事例
- エンジンオイル漏れが排気管に付着し発火
- 劣化したバッテリー配線のショートによる火災
- ブレーキオイル漏れでブレーキ過熱→火災
いずれも、日常点検や定期整備を怠ったことが原因とされ、火災防止の基本が実感できる事例です。
ハイブリッド車・EV車の発火事例
HVやEV車では高電圧バッテリーが火災原因となるケースがあります。
具体的には
- バッテリーセルの内部短絡で熱暴走し発火
- 事故によるバッテリーパック破損で発火
- 充電中の異常(過充電や冷却不足)で火災
従来車と異なり、バッテリー火災は消火が難しく、初期対応の重要性が高い事例です。
車内放置物による火災事例
車内に放置した可燃物が原因で火災に発展する事例もあります。
例
- ライターやスプレー缶の加熱による発火
- モバイルバッテリーの充電中過熱で発火
- 紙類や布製品が熱源に接触して燃える
これらは「ちょっとした不注意」が火災につながる典型例であり、日常管理の重要性を示しています。
火災後の車の扱い方
修理できるケースと廃車になるケース
車両火災後、修理可能か廃車かは被害の程度によります。
- 修理可能:火災が一部に留まり、エンジンやバッテリー、車体構造に致命的な損傷がない場合。部品交換や板金修理で復旧可能です。
- 廃車になるケース:車両全体が焼失、フレームが変形、電気系統やバッテリーが完全に破損している場合。修理費用が車両価値を上回る場合も廃車となります。
保険・警察・業者への連絡手順
火災後の手続きは迅速かつ正確に行うことが重要です。
- まず消防署・警察に通報し、事故証明書・火災報告書を取得
- 加入している保険会社に連絡し、事故状況を報告
- 修理や廃車の手続きのため、信頼できる整備工場や廃車業者に相談
この流れを守ることで、保険金請求や廃車手続きがスムーズになります。
廃車買取での対応と注意点
火災車を廃車買取に出す場合は、以下に注意すると安心です。
- 火災証明書や保険会社の書類を提示することで、査定がスムーズになる
- 車両の引き取り方法(レッカー手配など)を事前確認する
- 信頼できる廃車買取業者を選ぶことで、トラブル回避や適正価格での売却が可能
火災で損傷した車でも、書類や状態によっては一定の買取価格がつく場合があります。
まとめ
車両火災は「防げる事故」
車両火災は、偶然や天災だけで起きるものではなく、多くの場合は整備不良や取り扱いミスなど、人が注意すれば防げる事故です。
日常点検や適切な車両管理が、火災リスクを大幅に減らすことにつながります。
日頃の点検と安全意識が重要
車両火災を防ぐためには、以下のような習慣が大切です。
- エンジンオイル、冷却水、バッテリー配線などの定期点検
- 電装品や後付け機器の安全な取り付け
- 車内の可燃物を減らす工夫
日頃の安全意識が、重大な火災事故を未然に防ぐ鍵となります。
もしもの時は落ち着いて行動を
万一、火災が発生した場合は、焦らず冷静に対応することが重要です。
停車・避難・通報を優先し、初期消火は小規模な火災に限定します。
危険な行動(ボンネットを開ける、水をかける等)は避け、安全確保を最優先してください。
落ち着いた行動が、自身や同乗者の命を守る最大の手段です。









