車の購入手段の1つである「残クレ」は、月々の支払額が抑えられるとして自動車企業がCMなどでお得さをアピールしています。しかしながら、残クレにはメリットもあればデメリットもあり、すべての方におすすめというわけではありません。仕組みを正しく理解して利用するかどうか判断しましょう。
残クレとは?
まずは「残クレ」がどのようなものなのかについて解説します。
「残価設定ローン」や「残価設定クレジット」の略
まず、「残クレ」とは「残価設定ローン」あるいは「残価設定クレジット」の略です。
いわゆるローンと同じく車を購入する際にその代金を分割で支払う方式なのですが、後述するように普通のローンにはない特徴があります。
「残価」は「残存価格」の略
また、「残価」は正式には「残存価格」といい、ものに残っている価格のことを指します。たとえば車であればその車を売却するときに付く価格です。
車の残価は総務省が発表している「中古車残価率表」を目安に算出されます。たとえば乗用車の場合、1年後には新車の68.1%に、3年後には31.6%に、10年後には2.1%になります。
価格から残価を引いた支払いで車に乗れる
残クレはこの「残価」を前提にローンを設定している点に特徴があります。
車を売る側はその車を数年後に購入者から返却してもらい、売却することを前提に購入者に売ることで、車本来の価格から売却時に得られると見込まれる価格(=残価)を引いた分だけを購入者に支払ってもらうのです。
これにより購入者は車の価格の一部のみ支払えばよく、通常のローンよりも安い支払いで車に乗れます。
残クレとリースの違いを知って選ぶ賢い方法
「車に安く乗れる方法」としてよく聞く残クレ(残価設定ローン)とカーリース。どちらも月々の負担を抑えながら車に乗れる点では似ていますが、仕組みや自由度は大きく異なります。ここでは、2つの違いをわかりやすく比較していきます。
まずはざっくり比較表でチェック!
比較項目 | 残クレ(残価設定ローン) | カーリース |
---|---|---|
車の名義 | 原則、購入者名義 | リース会社名義 |
毎月の支払い | 残価を引いた車両価格+金利 | 車両代・税金・保険など全てコミコミ |
契約終了後の選択肢 | 買い取り・返却・乗り換え | 基本は返却(買い取りも可能な場合あり) |
走行距離制限 | あり(超過時は追加請求あり) | あり(リース会社によって異なる) |
カスタマイズの自由度 | △(返却時に原状回復が必要) | ×(原則不可) |
車検・保険の扱い | 自分で手配(プランによる) | 含まれることが多い(プランによる) |
中途解約 | 原則不可または違約金が発生 | 原則不可または高額な中途解約金 |
残クレは「所有」重視の人におすすめ
残クレは最終的に車を手に入れる(買い取る)こともできるのがポイント。
乗り換えや返却も選べますが、基本は「ローンの一種」であることを意識しましょう。
リースは「利用」重視の人におすすめ
カーリースはあくまで“借りる”という仕組み。車はリース会社の所有物で、毎月の支払いには税金・保険・メンテ代などが含まれているプランも多く、手間がかからないのが大きなメリットです。
知っておきたい!残クレに伴う隠れた費用とその対策
残クレ(残価設定ローン)は、月々の支払いが抑えられるお得なプランとして人気ですが、実は**「思ったより出費がかさんだ…」という落とし穴も少なくありません。
返却時の修理費・原状回復費用
見落としがちポイント: 返却時には「車両の状態チェック」があり、キズ・へこみ・内装の汚れなどが評価の対象になります。基準を満たさない場合は、修理費用を請求されることも。
対策
- 小さなキズでも早めに修理しておく
- 飲食やペット乗車はなるべく避け、車内を清潔に保つ
- 返却前に簡易クリーニングをしておくのもおすすめ!
走行距離オーバーによる追加請求
見落としがちポイント: 残クレには走行距離の上限(例:年間1万kmなど)が設定されており、これをオーバーすると1kmごとに10〜20円などの超過料金が発生します。
対策
- 通勤や旅行など、距離が多くなりがちな使い方は要注意
- 定期的に走行距離を確認し、契約上限を把握する
- 超えそうな場合は、早めに買取や乗り換えを検討するのも手!
残価との差額請求のリスク
見落としがちポイント: 契約終了時に「返却」や「乗り換え」を選んでも、実際の査定額が残価を下回っていた場合、その差額を請求されることがあります。
対策
- 契約時に「残価保証」があるプランを選ぶと安心
- 長期保有を前提とするなら、あらかじめ買い取り前提で考える
- 自分で売却して差額を補うという選択肢も検討!
自動車保険・メンテナンス費の自己負担
見落としがちポイント: 残クレ契約では、自動車保険や車検・オイル交換などのメンテナンス費は別途自己負担になります(ディーラーによってはパックもあり)。
対策
- 保険料込み・メンテナンス込みのパッケージを確認
- 事前に年間維持費をシミュレーションしておく
- リースやサブスクと比較して、コスト感を把握する
残クレを利用する3つのメリット
残クレを利用することで、以下の3つのメリットを得ることができます。
1. 月々の支払額がローンに比べて安い
1つ目のメリットは月々の支払額が通常のローンに比べて安いという点です。
前述の通り、購入者は車の価格から残価を引いた分だけを支払えばいいため、車の価格全体から算出された支払いよりも月々の支払いが安くなります。
また、残クレを利用して3年で新車から乗り換える場合、車検を受ける前に乗り換えられるため車検の費用も節約できるでしょう。
2. 支払期間終了後に乗り換えができる
残クレはその制度上、一定期間車に乗ったらその車を返却するか残りの代金を支払ってそのまま乗り続けるか選ぶことができます。
たとえば新車を残クレで購入し、3年〜5年後にその車を返却して再び新車を残クレで購入すれば、常に新しい車に乗り続けることが可能です。新しい車のデザインや技術に興味がある方にうってつけといえるでしょう。
また、結婚や出産、転勤などのイベントごとに最適な車は変わりますので、残クレとそれらのタイミングをうまくあわせることで、常に現在の状況にあった車に乗り続けることができます。
3. 中古車で利用すればさらにお得
残クレは新車でしか利用できないと思われがちですが、実は中古車でも利用可能です。
元々新車に比べて価格が安い中古車ですので、残クレを利用することでさらに月々の負担を減らすことができるでしょう。新車にこだわりはないが、いろいろな車に乗ってみたいという方におすすめです。
残クレを利用する6つのデメリット
残クレの利用はメリットばかりではありません。ここで紹介する6つのデメリットもしっかりと頭に入れて利用してください。
1. 利息はローンより高い
残クレの場合、月々の支払い額合計だけでなく残価にも金利がかかります。このため、月々の返済額が安い分元金の減りが遅く、利息が通常のローンより高くなり安いです。
ローン会社によっては残クレの金利を一般的なローンよりも安くしていることがありますが、利息分も含めた返済額をあらかじめ計算しておく必要があります。
2. 走行距離に制限がある
残クレでは残価で車が売却できるよう、売却価格を下げる可能性がある走行距離に制限を設けています。
具体的な制限はメーカーごとに異なりますが、自分が日常的にどれくらいの距離運転する必要があるかを計算し、制限以上にならないよう気を付けてください。
走行距離の制限を上回った場合、追加料金を請求される可能性があります。
3. 自分で売ったほうが高いことも
残クレは購入時に残価を設定しますが、返却時に必ずしも車が残価と同じ価格で売れるとは限りません。場合によっては残価よりも高い価格で売れることもあるでしょう。
中古車市場で人気の車種や、希少価値のある車種の場合、月々の返済額は高くても通常のローンを利用して購入し、自分で中古車業者に売却したほうがトータルでの支払額が安くなるかもしれません。
4. 傷や故障があると追加請求される
先述のように残クレは残価で車が売れることを前提としているため、走行距離だけでなく傷や故障も追加請求の対象となります。
事故が起きることも想定し、車両保険も含めた自賠責保険に加入しておいたほうがよいでしょう。
5. カスタマイズできない
残クレで購入した車は返却時に元の状態に戻す必要があります。このため、安易にカスタマイズをおこなうと元に戻すのに多額の費用が必要になるかもしれません。
カスタマイズを楽しみたいなら通常のローンを利用することをおすすめします。
6. 他メーカーへの乗り換えがしづらい
残クレの期間終了後に再び残クレを使って乗り換えをおこなう場合、同じメーカーのほうが精算や契約などの点で簡単に済みます。
別のメーカーにしようと思うと、前のメーカーで精算をおこない、次のメーカーで契約をおこなう必要があり、面倒な手間がかかるでしょう。
残クレ利用で得をする方の特徴
これらのメリットやデメリットを踏まえ、残クレを利用することで得をする方の特徴を解説します。
1. 車が必要な期間が限られている方
残クレは一定期間後に車を返却することを前提にしている制度のため、車が必要な期間が限られている方にうってつけです。
月々の返済額を減らせる上に、必要なくなったときに中古車業者に見積もりを依頼するなどすることなくスムーズに返却できます。
仮に状況が変わってより長い期間車が必要になったとしても、新しく残クレを組み直したり、残金を支払って同じ車に乗り続けたりすることもできるので、フレキシブルに対応できるでしょう。
2. 車をどんどん乗り換えたい方
車をどんどん乗り換えたい場合、通常であれば下取りと売却の選択や、見積もりを複数業者に依頼するなど、手続きに手間と時間がかかります。
残クレの場合は車を返却するだけで乗り換えできますので、手間をかけずに新しい車に乗り換えることが可能です。
前述の通り、新車を残クレで購入して3年で返却すれば車検が不要なのも費用と手間の削減に寄与します。
3. 特定メーカーに愛着がある方
残クレによる乗り換えは、同じメーカーのほうがスムーズにおこなえます。このため、特定メーカーに愛着があるのであれば、そのメーカーの残クレを利用するとよいでしょう。
支払いが未完了の状態で乗り換える場合でも、残額の支払いについて相談できるかもしれません。
4. 少ない元手で新車に乗りたい方
残クレの場合、月々の返済額が安いだけでなく頭金も不要です。このため、手持ちの資金が少ない状態で新車に乗りたい方にピッタリのシステムといえます。
ただ、トータルでの支払額が安くなるかについてはしっかりと検討するようにしてください。
残クレ利用で損をする方の特徴
残クレを利用することで損をする場合もあります。損をする方の特徴を解説しましょう。
1. 車を傷つけることがよくある方
車をどこかにすったりぶつけたりして車を傷つけることがよくある方は、残クレを使用しないほうがよいかもしれません。
車体に傷があると追加請求を受け、安く済ませるつもりがかえって高くなるということもあるでしょう。
2. 車に愛着を感じやすい方
残クレは基本的に一定期間後に車を返却し、新しい車に乗り換えるシステムです。残金を支払って乗り続けることもできますが、前述の通り利息が高くなる傾向にあることもあり、かえって高くなる可能性があります。
車との思い出を大事に乗り続けたいなら残クレ以外の方法で購入したほうがよいかもしれません。
3. 長距離運転が必要な方
仕事や趣味などで長距離運転を必要とする方は、残クレに設定されている走行距離制限を超えてしまう可能性があります。制限を超えた場合は追加請求の対象となりますので注意してください。
どれくらいの距離を走る可能性があるか、余裕を持って見積もっておくことをおすすめします。
4. 人気が高い車種に乗りたい方
人気が高い車種の場合、中古車市場で高く取引がおこなわれるため、残クレを利用するよりも自分で売ったほうがトータルで安くなる可能性があります。
残クレを利用するよりも、ローンなどで購入して乗り換え時に自分で中古車買取業者に持ち込んだほうがよいかもしれません。
5. 十分に購入資金がある方
残クレの場合は頭金が必要なく、かつ残価にも利息がかかりますので、利息が大きくなる傾向にあります。十分に購入資金がある場合は頭金を支払ってローンを組むか、一括で購入したほうが安くなるでしょう。
乗り換えが簡単というメリットはあるものの、「残クレはお得」という印象だけで利用しないことが大事です。
残クレ以外で車に安く乗る3つの方法
最近は残クレ以外にも月々の支払いを抑えつつ車に乗る方法があります。その代表例を3つご紹介しましょう。
1. サブスク
携帯電話の契約でよく聞く「サブスクリプション」、いわゆるサブスクですが、車購入の選択肢としても存在しています。
実は基本的なシステムは残クレと同じで、残価をあらかじめ設定し、車の価格から残価を引いた金額を毎月支払うというシステムです。
残クレの場合は一般的に税金や自賠責保険はユーザーが自分で支払いますが、サブスクの場合はこれらも月額料金に含まれており、より気軽に車に乗れるサービスといえるでしょう。
車のサブスクとはメリットデメリットや料金を分かりやすく解説-廃車ひきとり110番コラム
2. カーリース
カーリースはいわば車のレンタルで、リース会社が購入した車に対してユーザーが月額料金を支払って借りるというものです。
基本的には契約満了時には返却することになりますが、返却以外にも再度リース契約を結んだり残金を支払って買い取ったりなどの選択肢がある場合もあります。
3. カーシェア
カーシェアは1台の車を複数人で共有して使うシステムです。乗った分だけ料金を支払えばよいので、車を使う機会が少ない方にとってはお得なシステムといえるでしょう。
一方、使いたいと思ったときに車が空いているかわからなかったり、必ずしも自宅の近くにカーシェアの車があるかどうかわからなかったりというデメリットがあります。
買い取り、返却、乗り換え?残クレ終了時の賢い選択
残クレ(残価設定クレジット)の契約期間が終了すると、基本的に「買い取り」「返却」「乗り換え(再契約)」の3つの選択肢から選ぶことになります。
【1】買い取り(残価を支払って車を自分のものに)
残クレ終了時に「この車をこのまま乗り続けたい」と思った場合は、残価(契約時に設定された将来の車の価値)を支払って車を買い取ることができます。これは、月々支払ってきた金額に加えて、最後にまとまった金額を支払うことで、その車の所有権を得るという形です。
特に、車に愛着があり、今後も長く乗りたい人にはおすすめの選択肢です。また、中古車市場でのその車の価値が残価より高ければ、いったん買い取った後に売却して差額分で得をすることもあります。
ただし、逆に車の市場価値が残価を下回っている場合、あえて買い取ると損になることも。契約終了時には、車の状態や相場をよく確認し、冷静に判断しましょう。
【2】返却(車を返して契約終了)
残クレでは、契約満了時に車を返却するだけで契約が終了する選択肢もあります。これを選べば、残価の支払いは不要。追加でお金を支払わず、シンプルに終わらせたい人には向いています。
ただし注意したいのは、車に傷やへこみ、修理が必要な個所がある場合や、契約時に定められた走行距離を超えていると、追加で請求が発生することがあります。「乗った分だけ返す」という感覚では済まないので、あらかじめ車のコンディションをチェックし、可能なら簡単な整備や清掃をしておくと安心です。
また、次の車の予定が決まっていない方は、車が手元からなくなるという点も念頭に置いておきましょう。
【3】乗り換え(新しい車で再び残クレ契約)
ディーラーによっては、現在の車を返却して新たに別の車で残クレ契約を結び直す「乗り換えプラン」も用意されています。これを選べば、常に新車に乗ることができ、車検や大きなメンテナンスを避けて快適なカーライフを送りたい人にとっては魅力的です。
最近では、電動車や高級車にも対応したプランが増えており、手の届かなかった車種に乗れる可能性もあります。月々の支払いを一定に保ちながら、数年おきに車を乗り換えるスタイルは、今の若い世代にも人気です。
ただし、契約が続く限りは「所有」ではなく「利用」にとどまり、車にカスタマイズや過度な使用が制限されることがあります。また、毎回契約審査が必要となるため、信用情報なども継続的にチェックされる点には留意が必要です。
【4】実は売却できるケースもある!
残価よりも車の市場価値が高い場合、自分で買い取ったあとに車買取専門店に売却すれば、差額が戻る可能性も!
例)
残価:50万円
買取業者の査定:60万円
➡差額の10万円が“手元に戻る”ことに!
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ライフスタイルに合った選択を!
残クレ終了は、カーライフを見直す絶好のタイミング。
これからも車を持ち続けるのか?それとも一度リセットするのか?
あなたの暮らしに合わせて、“賢く選ぶ”ことが大切です。
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